皇位継承資格の男系限定を、無理な条件下でも維持しようとする人々は、
「女系継承は王朝の交替を意味するから駄目!」と主張されている
(王朝とは同じ君主の家筋に属する君主の系列)。しかし、そんな単純な話ではない。
そのことは、例えばフランスの歴史上の王朝交替の実例を見ても、分かる。
カロリング王朝時代(843年~987年)の
第6代ウード、第8代ロベール1世(ウードの弟)は
ロベール家の出自であり、第9代ラウールはロベール1世の義子
(出自は領邦諸侯のホゾン家)。ロベール家は勿論、カロリング王朝と血の繋がりは無い(当然、ホゾン家も)。
カロリング王朝が途絶えた後、カペー王朝(987年~1328年)に交替するが、
同王朝はこのロベール家に連なる。そのカペー王朝の次のヴァロワ王朝(1328年~1589年)
の初代フィリップ6世は、カペー王朝の第10代フィリップ3世
(国王の代数としては6代前に遡る)の孫だから、
当然、男系の血筋では繋がっている。にも拘らず、ここで王朝が交替したと見られている。
更に、その次のブルボン王朝(1589年~1792年)も、
初代のアンリ4世は、カペー王朝の9代・ルイ9世の
男系の10世の孫だった。だから、男系の血筋ではカペー王朝及びヴァロワ王朝とも
繋がっている。
にも拘らず、血筋の遠さ故に、王朝交替とされている。しかし10世というのは、わが国のいわゆる
旧宮家系の男性子孫が20世以上離れているのに比べると、
血縁的には遥かに近い。
それでも王朝交替とされているのだ
(日本の旧宮家の場合は、ずっと血縁が遠い上、
更に皇族の身分から明確に離れている)。一方、オランダ王家の場合はどうか。
今のウィレム=アレクサンダー国王の前は、3代続いて女王
(ウィルヘルミナ→ユリアナ→ベアトリクス)だった。
当然、女系継承。
しかし、それによってオランニェ=ナッサウ家が断絶した訳ではない。
何の支障もなく、同一の王朝が存続しているのだ
(次代も長女が王位を継承される予定)。男系継承が王朝の存続、女系継承が王朝の交替を意味するー
という“単純図式”では、歴史を正しく見ることが出来ない。【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/
BLOGブログ